フェーザ表示を理解、マスターしよう!

電気回路で頻出のフェーザ表示、そもそも何のことかわからない、または一応勉強してみたけど何のためにこんな表示法を考えるのかわからない、という方々のためにわかりやすく解説していきます!

そもそもフェーザ表示って何?

 フェーザとは、英語で表記すればphasorであり、実はこれはphase(位相)とvector(ベクトル)の混成語であるようです。つまりその言葉からもイメージできるように、フェーザ表示とは交流をその大きさと位相のみを用いてベクトルで表現するツールです。とはいってもわかりにくいと思うので具体的な式を用いて説明していきましょう。

フェーザ表示の方法

 まず、交流電圧、または交流電流を、\(g(t)=A_m\cos(ωt+θ)\) とします。このとき、オイラーの公式 \(e^{jθ}=\cosθ+j\sinθ\) を用いると、\[A_me^{j(ωt+θ)}=A_m\{\cos(ωt+θ)+j\sin(ωt+θ)\}\]であるから、 \[g(t)= \Re[A_me^{ j (ωt+θ) }]\]とできます。(\( \Re[x]\) ... \(x\) の実部)

補足
なぜ、わざわざ面倒な複素数表示をするのか。それはずばり、
計算が簡単だから
です。 実際に計算していくとわかりますが、加減乗除の計算が簡単になります。また、ベクトルで表現できるようになるというのも利点の一つです。交流電圧、電流は一旦扱いやすい複素数で表してから計算した後、実部、または虚部をとって正弦波の形に戻してあげることができるわけです。

ここで、\(g(t)\) の複素数表示を \(A_me^{ j (ωt+θ)}=A_m(e^{jωt}+e^{jθ})\) と分解すると、\(e^{jωt}\) が角速度、\(e^{jθ}\) が位相の表現を担当しています。
さあ、もうちょっと \(g(t)\) を簡潔に表したい...そういえば高校物理ではインダクタ(コイル)の電流は電圧に対し90度位相が遅れる、なんてことを習いましたが、この場合、位相は変化しているけど角速度は変化していませんよね。そこで 角速度 \(e^{jωt}\) は共通であることが多い=比較的些細な情報とみなし、省略して、\(g(t)\)を\[\dot{A}=Ae^{jθ}\ (A=\frac{A_m}{\sqrt{2}})\]

としてしまうわけです。

\[\dot{A}=Ae^{jθ}\]のように実効値と位相のみで交流を表現することを、フェーザ表示といいます。

まとめ

  • フェーザ表示は実効値と位相で交流を表現すること!
  • 交流の複素数表示はそれ自体に意味はなく、計算を簡単にするもの!